約束の場所へ 自宅マーダーミステリーの最初の作品

2019.09.15

約束の場所へ

モアイディアスゲームスによる6人向けのマーダーミステリーです。

ここまで、ずっと紹介したかった作品でした。
可愛らしいイラストの「約束の場所へ」は、大学生達が織りなすマーダーミステリーです。数多くあるマーダーミステリーの中で、いち早く日本語化され、2019年春のゲームマーケットで販売された、市販品としては日本で最速で手に入れられる作品でした。

多くの伝統的なマーダーミステリーと同じように、GMがいなくても遊ぶことができるものですし、遊んでしまえば内容がわかってしまうのでもう遊ぶことができない作品でもあります。しかし、マーダーミステリーを遊ぶことが初めての人には、GMがいた方が安心して遊ぶことができることもあり、GMありでの会も多く見られました。

正直に言えば、この作品の評価は大絶賛とはいえないものです。本来はGMなしで遊ぶ前提の作品同士で評価されるべきですが、お店で行うマーダーミステリーと比べられてしまうがために少し割りをくった作品といえるかもしれません。できれば、お店でマーダーミステリーを遊んだ後にこの作品を遊べば、迷う点は少ないでしょう。

先日、友人達の自宅ゲーム会でこの作品をGMする機会にめぐまれました。

作品イントロダクション

春も終わりかけたころ、スポーツ特待生の「裕也」は、あるイベントを企画した。リーダー「真司」の家族が所有する別荘に泊まり、近くにある有名な恋愛成就のほこらを観光しようというものだ。参加者は裕也の彼女「夏希」、そのおてんばな妹「夏海」、そして夏希が誘った内向的な文学少女「汐璃」と助教の「慶一郎」である。夏希はこの旅行で汐璃に友達ができればと思っていた。

旅行は2泊3日の計画だったが、予定通りとはいかなかった。まずは真司が買うコーラを間違えたことが原因で裕也と口論になった。また、日程のことで全員の間に不和が生じたりもした。間に合わせの夕飯を取り、ロビーでテレビゲームをして各自が部屋に戻るころには、窓の外で大粒の雨が降っていた。まるでトラブル続きのあなたたちをあざ笑うかのように……。

翌日、太陽とともにやってきたのは爽やかな朝ではなく、険しい顔の警察官であった。警察官はにわかには信じがたい情報を口にする。「裕也の死体が恋愛成就のほこらで発見された」というのだ。昨日の大雨のせいで、外部の警察が応援に来るには時間がかかる。最後に被害者と一緒にいたあなたたちは、当然、捜査への協力を要請される。場を支配する沈黙の中で、皆は同じ考えを口に出せないでいた──犯人はこの中にいるのだろうか?

フェーダー紹介

フェーダー紹介とは、マーダミステリーに特徴的な部分を定性的・定量的に紹介するものです。

・犯人の数と犯人役

犯人役についての情報はここでは秘密にさせていただきます。

・プレイヤー数と最低参加人数

プレイヤー人数は、6名。最低参加人数は5名です。

・プレイ時間と休憩

プレイ時間は、全体で2ー3時間ほど。自宅でプレイする場合、時間はあらかじめ取り決めておけば多少前後してもいいでしょう。(特に設定確認の時間)

設定確認と自己紹介パート 10分+10分

現場捜査 20分

調査パート1 (密談のみ) 30分

調査パート2 (全体+密談)30分

投票と解決編

というように分かれています。

・GMの有無

原則はGMなしで進行できるようになっています。
GMが介入するのは、こういう時はどうしたらいいか、といった他の人に聞けないことがあるときぐらいです。もしマーダーミステリーのプレイが初めてなら、GMがいると心強いでしょう。

・会場の特徴 自宅かお店か

自宅で行う場合、密談をする仕組みであるため、2箇所ぐらいこっそり話せる場所があるといいことがわかりました。この回は、廊下・寝室などを使っての密談をしていました。GMも、全ての密談は把握できません。きっと怪しい会話が飛び交ったことでしょう。

・犯人捜査 (協力型か、単独捜査か)

犯人は投票による多数決で行われるため、協力の大きな動機になりますが、個別の秘密のミッションもあるため、協力しきれないことも多くあります。共通の場に情報を公開するか、しないかという判断が求められます。犯人が当てられなくとも、個別のミッションによる報酬があります。

・探偵役の有無

いわゆる以下のような探偵役がいます。

「物語の前提知識はないが、積極的に情報収集する権利や能力を持つ」

しかし、犯人でないとはいえません。

・演技の有無

特別なセリフや演技の必要はありません。
ただ、冊子の内容を読み上げるようにプレイすることはおすすめできません。

少なくとも、この登場人物の背景を知って、あなたが感じたこと、誰に何を話すかを選んでいくことで、この大学生達の人間関係をより身近に感じられると思います。冊子の内容は、「ちょっと思い出す」といって中身を確認するような形がいいでしょう。

・嘘の有無

マーダーミステリーでは、犯人は必ず「嘘」をついていいことになっています。しかし、「約束の場所へ」では、その他の人たちは嘘をつくことはできません。
この要素は、初めてのプレイヤー達にはより遊びやすい要素になりもしますが、嘘はつけなくても自分が得た情報を公開しないことは自由ですので、嘘とは別の軸で真実にたどり着けない可能性はあります。

・オープン型かクローズ型か

中国産のマーダーミステリーらしく、このゲームはオープン型になっています。
オープン型というのは、プレイヤー達が自由に誰とでも会話し交渉できるマーダーミステリーのことです。自由度が高い反面、どんな展開になるか読めない点もあります。

ギミック

ギミックとして、密談(3人までの秘密の会話)、マルチエンディング(それぞれの個別ミッションや全体ミッションの結果によるエンディングの変化)があります。特に捜査の途中で、密談しかできないという時間があることがこの「約束の場所へ」を特別なものにしています。

感想

「約束の場所へ」はオープン型・自宅向けゲームの最前線にやってきた作品で、本来ならもっと「ド初心者向け」の作品が良かったのではと思えるくらい、意外に難易度が高く、GMなしで初めて遊んだ人たちが何も知らないまま、お互いに冊子を読み上げて遊んでいってしまったり、個別ミッションを最優先させてしまうと、嘘をつかなかろうが真実はまたたくまに霧の中という気がします。うわー、それじゃー面白さもなにもないじゃないか、というところで、GMがいた方がよくなるわけです。

誰もが秘密を抱える容疑者になってしまう物語としてはよくできていますが、マーダーミステリーとしてはまずまずの出来だと思います。この作品は、いい評価も悪い評価も、GMなしでできるマーダーミステリーの1つの基準になるゲームだと思います。(個人的には、ヤノハのフタリも別にGMはいらないと思う)

一方で、本質的にはGMは不要ですので、GMもわりと暇になりがちで、別の人の別の結末をみてやるぞという人でなければGMするのは時間を持て余し気味で大変でしょう。人数も比較的少ないため、慣れていて自宅で集まれるのであれば、その方がいいゲームです。自宅などでやる場合は、ゲーム時間には余裕を持たせることをおすすめします。

soukyuu

クトゥルーライブサークル マスカレイドのコアメンバー。 マーダーミステリー、ボードゲーム、LARP、TRPGなど体験したり物語を作っていくゲームが好き。
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